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パソコン前に座る女性

時間外・休日労働に対する割増賃金の適正な算定と支払方法を確認

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「法定の時間外労働」や「法定の休日労働」をした場合には、その時間又はその日の労働について「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の25% 以上の率で政令で定める率以上で計算した割増賃金」を支払う必要があります。
労使協定(36協定)で定めた残業等のほか、非常災害時に行う臨時業務による残業等について支払いが必要となる割増賃金ですが、違法な残業の場合であっても割増賃金を支払う義務があります。

また、月60時間を超える法定の時間外労働については、「通常の労働時間の賃金の計算額の50%以上の率で計算した割増賃金」を支払う必要があります。

本記事では割増計算のベースになる「通常の労働時間の賃金の計算額」についての正確な取扱いを中心に整理しました。

 

「通常の労働時間の賃金の計算額」とは

通常の労働時間の賃金の計算額とは、1時間当たりの賃金額に、働いた時間外労働や休日労働の時間数を乗じた金額のことです。

基準法・施行規則では次のとおり計算した額に延長時間や休日労働時間数を乗じて求めることとされています。

 

1時間当たりの単価計算の方法

 

時間給の額

時間給の賃金ならそれ自体が1時間当たりの賃金額なので、これはそのまんまです。

 

日給を1週間の1日平均所定労働時間数で除した額

1週間のうち5日間とも1日8時間を所定労働時間としていれば、単純に日給÷8Hですね。

 

月給を1年間における1月平均所定労働時間数で除した額

月176時間とか168時間とか月の稼働日数の違いで一般には各月とも同じ所定労働時間数になっていないので、どうしても12か月の所定労働時間数の総数を12で割って求め、1月平均所定労働時間数を求めることとなります。

月給額をこの時間数で割れば1時間当たりの賃金額が算出されるということです。

 

❹出来高払い制やその他の請負制の総額を総労働時間数で除した額  

出来高払い制やその他の請負制で計算された賃金総額を賃金算定期間における総労働時間数で割って求めた金額が、その出来高制や請負制による賃金の時間単価であると計算されます。

 

その他、月や週以外の「一定期間」で定められた賃金については上記の考え方に準じて算出します。

 

なお、休日手当やその他どれにも当てはまらない賃金は「月によって定められた賃金」とみなすとされています。

 

 
主任
要するに、1時間当たりの単価を算出して、それに延長した時間数や休日労働に要した時間数を掛け算するということです。時間給以外は平均計算をして算出する必要がありますね。
 
副主任
割増賃金額は、そうやって求めた金額に、時間外労働なら25%掛け、休日労働なら35%掛け、深夜労働なら25%掛け、という具合に算出するということですね。

 

「通常の労働時間又は労働日の賃金」に含めないもの

 

賃金が支給されてもそれを割増賃金の計算上は含めなくてよいものがあります。

所定労働時間が7時間の場合で、これを超え8時間以内までの労働について何か手当を支給することとされているとき、この手当は「通常の労働時間の賃金」とは認められないから、割増賃金の基礎に算入しなくても差し支えない。
昭和29年7月8日付け基発3264号、昭和63年3月14日付け基発150号
 
深夜において行われる看護等の業務に従事したときに支給する夜間看護手当は、「通常の労働時間又は労働日の賃金」とは認めらないから、割増賃金となる賃金に算入しなくても差し支えない。 
昭和41年4月2日付け基収1262号
  
特別の時間帯の業務に対する手当などは「通常の労働時間の賃金」とは言えないことから、このような手当等は計算に含めなくてもよいという考えです。  
  

割増賃金の基礎となる賃金に算入しない手当は限定的に列挙されている

割増賃金の計算の基本は上記のとおりですが、この計算に際して除外できる❶から❼の諸手当が法令で決められています。

 

❶ 家族手当

❷ 通勤手当

ここまでは基準法の規定で列挙されています。

さらに省令(労基則)で次の❸~❼の手当も割増賃金の基礎となる賃金に算入しないこととされています。

❸ 別居手当

❹ 子女教育手当

❺ 住宅手当

以上は、労働に直接関係ない個人的事情に基づいて支払われることから、計算の基礎に入れると割増賃金の額に不均衡が生じることになります。

❻ 臨時に支払われた賃金

❼ 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

以上は、算定技術が困難であるなどの理由から除外されます。

 

 
主任
計算から除いてよい手当はあくまでも「限定列挙」されたものしか認められておりませんので注意が必要ですね。毎月支給される精皆勤手当とか営業手当とかも算定に含めることになります。
 
副主任
確か、手当の名称にとらわれず実質によって判断しなさい、って聞いたんですが…
 
主任

そうですね。例えば、扶養の有無、家族の人数に関係なく一律に支給されるような家族手当はここでいう家族手当ではありません。
距離や費用に関係なく一律支給される通勤手当もここでいう通勤手当に入りません。
住宅形態(賃貸か持ち家か)ごとに一律支給する住宅手当もここでいう住宅手当ではありません。

 

もし時間外労働が翌日の始業時刻まで続いたら

もし残業が徹夜になり、気がつくと次の日の業務開始時刻になっていた場合には、残業の割増賃金の計算はどうなるのでしょうか。

これについては行政通達があります。

 

翌日の所定労働時間の始期までの超過時間に対して、法37条の割増賃金を支払えば、法37条の違反にはならない。

昭和26年2月26日付け基収3406号、昭和63年3月14日付け基発150号、平成11年3月31日付け基発168号

 

翌日の勤務が始まれば、前日から続いていた勤務はそこまで、ということです。

ですので、時間外労働の割増賃金計算も翌日勤務の開始時刻までの時間数しか計算に入りません。

 

 

時間外労働が深夜を過ぎて法定休日の日まで勤務が食い込んだとき

例えば日曜日を法定休日としている会社において、出勤日である土曜日に残業をしていて翌日の日曜日の夜中まで仕事がかかってしまった場合はどうでしょう。

その場合の割増賃金計算の仕方として、土曜日の残業に対する25%増しと深夜労働に対する25%増しだけでいいのか、少し疑問がわくかもしれません。

これについても行政通達があります。

 

法定休日の日の午前0時から午後12時までの時間帯に労働した部分が35%以上の割増賃金の支払いを要する休日労働時間となる。

平成6年5月31日付け基発331号

 

つまり、法定休日の労働に対して支払う割増賃金は、法定休日の時間帯であれば、それが残業の延長上にあったのかどうかに関係なく、その休日労働の時間数に35%以上の割増をつけることとなります。

 

時間外労働をしながら深夜労働になり、その後、暦が変わって深夜の休日労働日に入ったときは、

❶まず土曜日は、時間外労働の25%割増と深夜労働の25%割増
❷その後深夜に日曜日になってからは、深夜労働の25%割増と休日労働の35%割増
❸日曜日の朝5時以降は、休日労働の35%割増のみ

といった割増の重複の仕方になります。

 

36協定で休日労働は8時間と定めたが、これを超えたら

法定休日の日における休日労働に対しては、勤務開始時刻から35%以上の割増賃金の支払いが必要になります。

36協定で休日労働の日の労働時間数を8時間と定めても実際にそれを超えてしまっときの割増賃金はどうなるでしょうか。

行政通達をみてみましょう。

 

協定において休日の労働時間を8時間と定めた場合、割増賃金については8時間を超えても深夜業に該当しない限り35%増で差し支えない。

平成11年3月31日付け基発168号

 

休日労働は時間外労働とは区別されて規制されていますので、休日労働には残業時間数の概念がありません。

全体が初めから通常の時間外労働に対する率より大きな割増率となっているだけです。

ですので、いくら8時間という通常の1日の法定労働時間数を超えた労働でも、休日労働においては初めから35%以上の割増賃金を支払うとされているので、25%+35%=60%としなくてもよいのです。

 

 

割増賃金計算で1円未満の端数が出た場合の正しい取扱い

割増計算をすると、1円未満の端数が出てくることがあります。

その場合の処理方法についても行政通達がありますので、確認しておきましょう。

行政通達では、次の方法は基準法違反としては取り扱わないとしています。

 

❶ 1時間当たりの賃金額、割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること

❷ 1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、①と同様に処理すること

昭和63年3月14日付け基発150号

 

 

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固定残業代など労基法37条の算出方法と違う割増賃金の支払いは合法か

時間外労働や休日労働、深夜業に対しては割増賃金の支払いが必要になってきますが、その算出の方法について、固定額払いにするなど労基法37条の割増賃金の算出方法とは違った方法で行うことは許されているのでしょうか。

いくつかの判例により、固定残業代制に関する法律上の考えが明確化しています。

 

定額残業代、基本給組入など算定方法が労基法どおりでない場合であっても、割増賃金と通常の労働時間に対する賃金とが判別でき、かつ、割増分が労基法に基づく算定額以上となるよう差額支払いが合意されている場合には違法ではない。
最高裁平成29年7月7日医療法人社団Y事件、最高裁平成6年6月13日高知県観光事件など

 

時間外労働などの際に支払われる割増賃金について規定している労基法37条は、これにより算定された額を下回らない割増賃金を支払うことを義務付けているが、労働契約上の割増賃金の定めを労基法37条と同じ算出方法とすることまでは義務付けていない、と解されています。

 

重要なのことは、

❶ 割増部分とそれ以外の部分を明確に峻別できること「判別要件
❷ 37条の方法により算定した割増賃金額を下回らないか否か確認し下回るときはその差額を支払う義務を負うこと「精算要件

この要件が満たされていれば違法ではないと解されます。

 

 
主任
固定残業代がたとえば営業手当に含まれているとして、企業業績などで変動する場合には、はたして残業代が固定されているのかも不明ですし、第一、時間外労働の対価として支払うといった性格がないとなればその有効性は否定されるでしょう。

 

まとめ

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残業や休日労働、深夜労働に対する賃金の割増計算について整理しました。

時間単価を計算した上で、所要の時間数を乗じ、その25%、35%、50%などの金額を割増賃金として支給しますが、端数処理も含め労働者に有利な措置になることは法令上も問題ありません。

しかし、逆に1円でも足りないと労基法違反として処罰の対象にもなりますので注意を怠らないことが大切です。

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