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賞与支給月の月末1日だけの育児休業で社保料免除は脱法なの?

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2021年現在、月末時点で育児休業を取得している方については、その月の社会保険料が免除されます。 賞与(ボーナス)支給月には賞与保険料も免除されることから、特に男性において、ボーナス月の月末の一日だけ育休を取得する傾向が少なくないと聞きます。
しかし、2022年10月からこのルールは変更され、賞与については月末のみの休業では免除対象にならなくなります。

 

現在の育児休業期間中の社会保険料免除ルール

 

育児休業中の社会保険料(健康保険、厚生年金保険など)については、経済的負担に配慮して免除される仕組みが設けられています。

社会保険料の納付が免除される期間は、

育児休業を開始した日が属している月から、育児休業が終了する日の翌日の日が属している月の前月までの間

とされています。

「終了する日の翌日の日が属している月の前月」とは、実に回りくどい表現ですが、法律とはそういうものですので我慢することにしましょう。

これは、ちょうど月末まで育休をとりそこで終了するなら、その翌日は翌月になりますが、その前月ということで、結局元に戻って育休終了した月まで、ということを意味します。

つまり、月末まで休業した場合は、その月の分まで保険料免除の対象となりますが、月末以外の月の途中で終了すれば、その月の前月までの分の保険料が免除され、終了した月は免除の対象とはならないということです。

 

第159条 育児休業等をしている被保険者が使用される事業所の事業主が、厚生労働省令で定めるところにより保険者等に申出をしたときは、その育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間、当該被保険者に関する保険料を徴収しない。

 

育児休業期間中の保険料の免除額は年間概ね1,000億円

 

育児休業取得中の保険料については、賞与保険料を含み、被保険者の本人負担分と事業主負担分の両方とも免除されます。

平成30年度の一年間の実績として、男性だけでも5万件程度あるようでして、男女合わせて免除保険料金額は、年間ざっくり約1,000億円にもなります。

 

●免除件数
・協会けんぽ:201万件
・健保組合 :187万件

●免除金額
・協会けんぽ:484億円
・健保組合 :513億円

【第140回 社会保障審議会医療保険部会提出資料(抜粋)】
  

育休中の保険料免除についてどんな議論をしてきたのか

 

社会保障審議会医療保険部会において、育児休業の取得促進や公平性の是正、事務負担の軽減といった観点から議論し、2020年12月に「議論の整理」をとりまとめました。

 

【問題意識】

❶月末時点で育児休業を取得している場合に、当月の保険料が免除される一方、月途中に短期間の育児休業を取得した場合には、保険料が免除されないこと

❷賞与保険料については、実際の賞与の支払いに応じて保険料が賦課されているにも関わらず、免除されており、賞与月に育休の取得が多いといった偏りが生じている可能性があること

 

こうした問題意識をもって議論した結果、次のようにまとめました

 

【議論の結果】

❶月途中に短期間の育児休業を取得した場合に保険料が免除されないことへの対応として、育休開始日の属する月については、その月の末日が育休期間中である場合に加えてその月中に2週間以上の育休を取得した場合にも保険料を免除すること

❷その際には、同月内に取得した育休及び今後創設される見込みの新たな仕組みによる休業等は通算して育休期間の算定に含めること(※)

❸賞与保険料が免除されることを要因として、賞与月に育休の取得が多いといった偏りが生じている可能性があることへの対応として、育休が短期間であるほど、賞与保険料の免除を目的として育休取得月を選択する誘因が働きやすいため、連続して1箇月超の育休取得者に限り、賞与保険料の免除対象とすること

 

なお、(※)でいう「今後創設される見込みの新たな仕組みによる休業等」とは、「出生時育児休業」という新たな育休制度のことを指します。

特に男性の育児休業の取得をより進めるため、子の出生直後の時期について、現行の育児休業よりも柔軟で取得しやすい新たな仕組みとして産後パパ育休」とか「男性産休制度とも呼ばれる「出生時育児休業」の創設など、育児休業制度を改正する法案が、2021年6月に国会で可決成立したところです。

 

 

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主任
保険料免除の改正議論では、結局、月末要件を残すことは現行の標準報酬月額制度の限界であり、その見直し議論をするなら標準報酬月額制度の在り方も含め議論すべき、との意見があったようね。
 
副主任
中小企業の人手不足を鑑みると、2週間とか1か月といった育休取得期間は長すぎるので、1週間程度とするのが妥当との意見もあったようですね。
 
 

法改正の動向

 

育児休業期間中の保険料免除の新たなルールについては、「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」という法案に盛り込まれ、国会で審議されました。

 

次の各号に定める月の保険料は免除することとする。ただし、「その育児休業期間が1月以下である者については、標準報酬月額に係る保険料に限る」
1⃣その育児休業等を開始した日の属する月とその育児休業等が終了する日の翌日の属する月とが異なる場合

➡その育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの月

2⃣その育児休業等を開始した日の属する月とその育児休業等が終了する日の翌日が属する月とが同一であり、かつ、当該月における育児休業等の日数として厚生労働省令で定めるところにより計算した日数が14日以上である場合

➡当該月

 

つまり、

 

❶短期の育休の取得に対応して、月内に2週間以上の育休を取得した場合には,当該月の保険料を免除

賞与に係る保険料については、1か月を超える育休を取得している場合に限って免除対象となる

❸月末一日のみの休業でもその月の保険料は免除されるが、育休期間が1月超でないので、賞与に係る保険料は免除にならない

 

概念図は次のとおりです。 

 

見直しの方向性(第140回社会保障審議会医療保険部会提出資料抜粋)

 

まとめ

 

2022年10月以降は、育休を月末を含むような期間に限らず、2週間以上取得すればその月の保険料は免除されるようになります。

また、月末の一日だけの育休でも、現行制度と同様にその月の保険料は免除されますが、賞与の支給される月については、現行制度とは違い、育休期間が1か月超えないので賞与保険料は免除の対象から外れることになります。

この改正により、賞与月の月末だけの極めて短期間の休業を選択する人はもういなくなるのではないでしょうか。

今後は、「産後パパ育休」という新しい制度も始まりますので、特に男性については、育児休業は本来の「子の養育に必要な」休業という意味で、一定まとまった期間を継続的に休業することが定着するものと思われます。

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