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【義務化】男性社員の育児休業取得状況を公表する時期方法を整理

2023年4月1日以降、常時雇用する従業員数が1,000人を超える事業主は、毎年1回以上、男性労働者に係る育児休業等の取得状況について公表しなければなりません(育休法22条の2)。具体的に、どんな情報を、いつまでに、どのように公表しなければならないのでしょうか。

(育児休業の取得の状況の公表)
常時雇用する労働者の数が千人を超える事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、毎年少なくとも1回、その雇用する労働者の育児休業の取得の状況として厚生労働省令で定めるものを公表しなければならない。

公表義務化の目的は何?

厚労省は、「事業主が自らその雇用する労働者の育児休業の取得に向けた積極的な取組を進めていくという社会的機運を醸成するため」公表義務を事業主に課した、としています(令和3年11月30日付け雇均発1130第1号、以下「通達」と記載します)。

育児休業を分割して利用できる法改正や男性労働者が子の出生後8週間以内に柔軟で取得しやすい新たな育休制度(出生時育児休業「産後パパ育休」)が2022年10月から施行されます。

こうした制度改正の適正な実施を推し進めるためにも、規模が一定大きな企業に、毎年、自社の育児休業取得状況を公表させることで、特に男性労働者の育休取得状況がこれまで以上に進展することを期待する考えです。

2022年度以降の改正施行される育児休業法の内容

公表義務のある事業主とは?

事業主」とは、その事業の経営主体であって、個人企業の場合はその企業主個人、会社などの法人組織の場合にはその法人そのものの意であること(通達第2の1の(3))、と解されています。

したがって、各事業場や事業所の責任者は事業主の委任を受けて育児休業に関する権限を行使することはできますが、育休等の取得状況の公表については、事業所単位ではなく企業単位となります。

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何を公表しなければならないのか?

厚生労働省令(育休法施行規則第71条の4)に、公表すべき項目が2つ示されていますが、そのうちのどちらか1項目を選択します。

いずれも、男性労働者の子の養育への関わり具合を意識したものとなっています。

選択項目その1

●男性労働者の育児休業等の取得率

「その会社の男性労働者であって育児休業等をしたものの数」を「男性労働者であって配偶者が出産したものの数」で除して算定される「割合」

選択項目その2

●男性労働者の育児休業等と育児目的休暇を合計した取得率

「その会社の男性労働者であって育児休業等をしたものの数」だけでなく「小学校就学前の子を養育する男性労働者が育児目的の休暇制度を利用したものの数」も加算した合計数を「男性労働者であって配偶者が出産したものの数」で除して算定される「割合」

これら2つの項目からどちらかを選択して、算出された割合を公表することになります。

育児休業等の「等」には何が入る?

育児休業等の「等」とは、子の養育のために休業する育児休業のほかに、

◆3歳未満の子を養育する労働者のうち、業務の性質などを勘案して育児のための所定労働時間の短縮措置の対象とならない労働者(例えば、国際線の客室乗務員など)について、育児休業に関する制度に準じた措置(法23条2項)
◆小学校就学前の子を養育する労働者について、育児休業に関する制度に準じた措置(法24条1項)

が講じられた場合の休業を含みます。

なお、「出生時育児休業(産後パパ育休)も「育児休業」に含み、一般の育休と区別して割合計算を算出する必要はありません。

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「育児目的の休暇制度」には何が入るか?

育児目的の休暇制度とは、目的の中に育児を目的とすることが明らかにされている休暇制度を指します。

ここの「休暇」には、一般の年次有給休暇(労基法39条)、介護休暇・子の看護休暇(育介休法)は含まれません

育児目的の休暇制度は例えば、

失効年休の育児目的での使用
◆出産に伴い取得できる「配偶者出産休暇」(出産前が含まれていてもよい)
◆「育児参加奨励休暇
◆子の入園・卒園式、両親学級などの行事参加を含む育児にも利用できる「多目的休暇
◆育介法の看護休暇を上回る範囲の予防接種等の通院にために勤務中外出可能な制度
などの措置を指します。
出産予定日前に休暇を取得したけれど、出産予定日以後には休暇を一切取得していないときには、そのような育児目的休暇の取得は計算外になることに注意です。

「小学校就学前の子」とは?

「小学校就学前」は法律上の正確な表現では「小学校就学の始期に達するまで」とされています。

この意味は、「6歳に達する日の属する年度の3月31日まで」のことを指します(通達第4の1の(2))。

例えば、
平成29年(2017年)7月1日が生年月日の子が6歳に達するのは、令和5年(2023年)6月30日午後12時であり、したがって、この場合の「小学校就学の始期に達するまで」とは、令和6年(2024年)3月31日までのことを意味します。

分割取得した場合などの計算方法

 

算出方法などの詳細については次のとおりです。

子が同一なら取得人数は一人

育児休業や育児目的休暇を分割取得する、あるいは両方取得する場合などでも、同一の子について取得したものである場合には、一人として算定します。

計算対象は最初の年度のみ

事業年度をまたがって取得した場合は、休業等を開始した日を含む事業年度の取得のみ計算対象とし、分割して複数事業年度において取得した場合は、最初の休業等の取得のみを計算の対象とします。

算出結果は整数

算出した割合については、小数第1位以下を切り捨てます。
算定上の分母が ”0” なら割合については「ー」と記載します。その際、分母、分子の数をあわせて記載することも差し支えないとされています。

退職者はカウントしない

子の死亡や休業等を取得した者が公表前事業年度末現在で退職している場合には、その労働者は分母、分子の計算から外します。

公表の対象年度は?

 

各会社で決められた事業年度=会計年度で整理しますが、公表を実際に実施する事業年度の直前の事業年度における取得状況について算出します。

常時雇用する労働者が1,000人を超えていなかった会社が、1,000人を超えた場合は、その超えた日が属している事業年度に公表義務が生じます。
その際には、直前の事業年度の状況を算出して公表しなければなりません。

雇用者数が一時的に1,000人以下となったとしても、常態として1,000人を超えるなら公表の義務が課せられます。

なお、公表時には、取得率の算定を行った公表前事業年度と、公表対象とした取得率としてはどちらの項目を選択したかを明示する必要があります。

(2023年5月に公表する例)
当社における男性労働者の育児休業等に係る取得状況については、以下のとおりです。
●対象事業年度:2022年4月1日から2023年3月31日
●算出方法:育児・介護休業法施行規則第71条の4第1号(第2号)による。
●算出した割合:◎◎%

1,000人の算定には有期雇用労働者も含むのか?

常時雇用する労働者

常時雇用する労働者とは、事実上期間の定めのない労働者を指しますが、有期雇用労働者や日々雇用者については要注意です。

❶既に1年以上の継続した雇用期間のある者
❷雇入れから1年以上引き続き雇用される見込みのある者
これら雇用期間が反復更新されており、事実上「期間の定めのない者」と同等と認められるような従業員については、「常時雇用」する労働者として人数計算に含むことになります。
出向者の扱い
在籍出向者については、出向元と出向先の双方の事業主と労働契約関係がある状況ですので、出向契約の内容によりますが、育児休業に関する雇用管理を行っている事業主の方でカウントすることになります。

公表の時期・方法は?

公表時期は公表前事業年度終了後、概ね3か月以内に行うこととされています。

公表方法は、インターネットの利用やその他の適切な方法により行うとされており、自社のホームページや厚労省のウェブサイトである「両立支援のひろば」の利用が想定されます。

そのほかに、日刊紙や自治体の広報誌への掲載も考えられます。

事務所に備え付け、求めに応じて一般の方々にその状況を示すなどの方法でも差し支えないとされています。

要するに、一般の方々が会社における男性労働者の育児休業等の取得状況を知り得るような常識的な方法で公表するということです。

まとめ

 

2021年(令和3年)6月に公布された改正育児・介護休業法の施行は、2022年4月、10月、2023年4月の3段階施行となります。

それぞれの改正内容については、別途の記事で整理していますが、事業主による育児休業等取得状況の公表義務の施行で、改正法の段階的施行は完了します。

本記事は、主に厚労省通達「平成28年8月2日付け職発0802第1号、雇児発0802第3号、改正令和3年11月30日付け雇均発1130第1号」をベースに整理しました。

制度についてより詳細に確認する場合には、上記通達をご覧ください。

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