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【労働者性】労基法が適用されない同居の親族や家事使用人とは

労基法は「同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については適用しない」と規定しています。「働いている」としても、「労働関係」にあるとは扱わず、労基法の適用を除外しているのですが、適用除外の対象を画一的・機械的に理解していませんか?

この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。

労基法が適用されない同居の親族を使用する事業とは

 

「同居の親族は労基法の適用がない」ということを知っているだけでは、理解としては不十分で正確ではありません。

事業主と同居し生計を一にする親族を使用するというだけで、その事業が労働基準法上の適用除外になるものではありません。

一般の従業員がおらず、同居親族だけで業務に就いている限り、労働基準法の規制は一切適用されない、ということです。

その場合には、労働者の定義として「労基法上の労働者をいう」と規定している最低賃金法や労働安全衛生法の適用もなく、保護対象としての労働者がいないことになります。

 

労働関係が成立しているとみられる親族は労基法の労働者

一般の従業員を使用している事業場に、同居の親族も就労している場合には注意が必要です。

同居親族ばかりでなく、そのほかに一般の従業員も常時使用している事業においては、次の状況にあれば、私生活上の相互協力関係とは別に、独立した労働関係が成立しているとみて、その同居の親族も労基法上の労働者として取扱う旨の通達があります。

 

事業主と同居し生計を一にする親族が

1⃣ 一般事務、現場作業等に従事していること

かつ、

2⃣ 次の二つの条件を満たすこと

事業主の指揮命令に従っていることが明確であること

就労実態が事業場の他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること
特に、
①始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇等
②賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期等
について、就業規則その他これに準ずるものに定めるところにより、その管理が他の労働者と同様になされていること

【昭和54.4.2基発153号】

つまり、同居の生計を一にする親族であっても、
▶その事業場で他の労働者と一緒に就労し
▶他の労働者と同様に基本的な労働条件が適用され
▶同じ規律の下で指揮命令下に置かれる状態にある
そういうことならば、労基法が適用除外される同居親族とは異なり、事業主とその親族は労働関係に立つものとして、労基法が適用される労働者として扱うというわけです。
一般の従業員を使用している事業場に、同居の親族も就労しているというだけで、その親族が労基法上の労働者として取扱われるものではありません。
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家事使用人の扱いにも要注意

「家事使用人には労基法の適用がない」ということを知っているだけでは、理解として不十分です。

家事使用人の該当性について通達があります。

 

1⃣ 個人家庭における家事を事業として請け負う者に雇われて、その指揮命令下に当該家事を行う者は家事使用人に該当しない。

2⃣ 法人に雇われ、その役職員の家庭において、その家庭の指揮命令の下で家事一般に従事している者も家事使用人である。

【昭和63.3.14基発150号、平成11.3.31基発168号】

家事を事業として請け負う者に雇われ、その事業者の指揮命令の下に家事業務を行う者は、家事請負事業の労働者として家事業務に従事しているわけですので、労基法が適用されます。
一方で、
家庭の指揮命令の下で家事一般に従事する者は労基法の適用のない家事使用人ということになります。

まとめ

事業主と同居し生計を一にする親族であっても、労基法が適用される労働者になり得ること、

「家事」という点で同じ業務内容であっても、事業者の指揮命令下に置かれる場合には家事使用人に該当せず、労基法が適用されること、

以上の2点を確認しました。

 

労災保険法においては労働者の定義がありませんが、法律の目的・趣旨、法の成立経緯等から、適用対象の労働者は労基法上の労働者と同一と解されています。

したがって、労基法上の労働者に該当しない場合には、万が一死傷病を被ったときに十分な労災補償も受けられないなど、労働者に当たるか否かの違いは実際上の利害の差にもつながる問題でもありますね。

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