単純な一日における労働時間の延長による残業の算定とは違い、法定休日が絡む時間外労働や休日振替の場合の時間外労働や休日労働の扱いについては間違い易いので要注意です。
1か月単位の変形労働時間制で休日の振替をした結果、時間外労働が増えることも
1か月の変形労働時間制は、1か月以内の期間で平均して1週当たりの週労働時間を法定時間を超えないようにするなら、特定の日を8時間超え、特定の週を40時間超えに設定できる制度です。
その変形労働制の中で、休日に就労する一方、他の平日を休日とすることで、休日労働手当を支払わなくてもよい「休日振替」を行った場合でも、時間外労働手当(残業代)を支払わなければならない場合があります。
休日の振替を行うと、あらかじめ特定されていない日や週に法定労働時間を超えて労働することになる場合があります。
このような場合の時間外労働の取扱いについての行政解釈が次のとおり示されています。
つまり、事業場の就業規則に振替規定があれば法定休日の振替自体は可能です。
❶が、その結果、週40時間以内に収まっていた週について、その労働時間が40時間を超えるならば超えた分は時間外労働となり、
❷さらに、1日8時間を超える労働が設定されていない日が8時間を超えることになるならば、その超えた分は時間外労働となります。
●仮に、月曜日は所定労働時間は10時間と定められ、日曜日は法定休日であった場合、日曜日と翌日の月曜日が振り替わったとします。
すると、日曜日は8時間を超える労働時間は設定されていなかった日ですから、日曜日に月曜日の労働時間である10時間を充てると、日曜日は2時間の時間外労働となります。
●仮に、日曜日が法定休日、土曜日は所定労働時間が6時間とされ、週の所定労働時間が40時間であるケースについて考えます。
暦週の起点が日曜日の場合、前日の土曜日と日曜日が振り替わると、日曜から始まる1週間では前週の土曜日の労働時間である6時間分が加わり、その週の労働時間は46時間となって6時間の時間外労働となるということです。
【昭和63年3月14日 基発150号・婦発47号、平成6年3月31日 基発181号】
法定休日とされた日の前後の日と連続した労働の割増賃金はどうなるか
法定休日の前日から労働している場合や、法定休日に労働していて翌日の朝まで労働が継続したときの割増賃金の考え方はどうなるかみてみましょう。
休日労働手当は0時から24時までの時間帯が対象
◆休日労働としての35%以上の割増賃金率は、あくまでも「休日労働の時間帯」に勤務した部分が対象です。
前日の労働から引き続いた勤務であろうが、翌日に勤務が継続されようが、あくまでも「法定の休日労働手当」の支給対象は法定休日の日の午前0時から午後12時の間の時間帯に勤務した時間数に応じて計算されます。
しかも、休日労働の労働時間がいくら長くても、0時から24時までの時間帯において8時間を超えて労働したとしても、一律35%以上の割増のままでよいのです(深夜労働手当は別途)。
法定休日から翌日まで勤務が連続した場合
◆例えば法定休日である日曜日の夜から勤務して、翌日の所定労働日である月曜日の朝まで勤務を延長した場合には、日曜日の夜から深夜12時までは法定休日労働として35%以上の割増率が適用されます(深夜労働手当は別途)。
深夜12時を過ぎて所定労働日である月曜日にまで勤務が及べば、2暦日にまたがった勤務ですので、その勤務は勤務開始時間が属する日曜日の勤務として扱われます。
そうすると、月曜日の0時から朝方8時までの勤務は「日曜日の勤務」として扱いますが、その時間については「日曜日の勤務」としてみると8時間以内の勤務なので時間外労働になっていないとして、割増賃金の支払い対象とはなりません。
この場合、休日手当も時間外労働手当も支給しなくてよいのです(深夜労働手当は別途)。
なお、月曜日の勤務時間により、週40時間を超えて時間外労働となる可能性があることには注意です。
前日から法定休日まで勤務が連続した場合
◆例えば所定労働日である土曜日から勤務して、翌日の法定休日である日曜日にかけて勤務を延長した場合には、土曜日は労働時間の長さに応じて時間外労働の割増賃金(25%以上)の支給対象となります(深夜労働手当は別途)。
それから深夜12時を過ぎ翌日の法定休日である日曜日の時間帯にまで勤務が延長されると、その時間帯はあくまでも法定休日ですから、割増率は休日労働としての35%以上で足りることとなります(深夜労働手当は別途)。
土曜日から始まったので、「土曜日の勤務」の扱いですが、法定休日の時間帯なので土曜日の残業時間としてではなく法定休日労働の割増率が適用されるということです。
時間外労働手当としての割増率と法定休日労働手当としての割増率とを合算した割増率になるものではありません。