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育児休業を繰上げ終了し年休を取得してから退職したいと申し出た場合

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 育児休業中の労働者が予定を早めて終了日前に復職し、さらに復職直後に、残っている年次有給休暇を全部消化してから退職したいと申し出てきた場合、事業主としてはあまりに勝手な要求でこれには応じなくてもよいだろうとの直感は抱くものの、きちんと法的な根拠を示しながら、自信をもって断りたいと考えるかと思います。

 育児・介護休業法に抵触するとか法の趣旨に反するとして、個別紛争にまで発展することは避けたいですね。

 

育児休業終了予定日を1回に限り後ろ倒しには変更できる

 

 育児休業中の労働者は、育児休業終了予定日の日より1か月前までに申し出ることによって、1回に限り育児休業終了予定日の後の日に変更できます。
【法7条3項】

 

 もし、保育園に入園できないなどとして1歳までの休業予定だった労働者が、1歳6月やさらに2歳までの育児休業の取得をしている場合には、「1か月前まで」というのはそれぞれ「2週間前まで」になります。

 

しかし!育児休業終了予定日の前の日に変更できるとは規定されていません。

労働者の申出のみによる育児休業終了予定日の繰上げ変更については、法令で規定していないのです。

 

育児休業終了予定日の変更の申出(法第7条第3項)
……
 育児休業申出をした労働者は、厚生労働省令で定める日(則第16 条で、当初の育児休業終了予定日の1月前(1歳6か月までの育児休業及び2歳までの育児休業については、2週間前)の日と規定した。)までに申し出ることにより、1回に限り事由を問わず育児休業終了予定日を繰り下げる旨の変更の申出をすることができる……。
……
労働者の申出のみによる育児休業終了予定日の繰上げ変更については、規定していないものであること

ただし、各事業所において、労働者の希望により育児休業終了予定日を繰上げ変更することを認める制度を設けることは可能であること。

※ 通達 平成29年9月29日 雇均発0929第3号「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について」

 

 
主任
1回だけ認められる終了日の後ろ倒しは、事由を問わずに申出ができるとされているので、会社としては、終了日の繰り下げ変更の理由をあれこれ聞いたうえで、理由によっては了解しない、といった対応が許されないのです。
 
 
副主任
繰り下げ変更は1回できても、繰り上げ変更、つまり復職日の前倒し変更については、会社に特別の制度がないなら、会社は了解せず予定の終了日まで休業しておいてくださいと言えるのですね。

 

 

復職した直後に年休は取得できるのか

 

 育児休業中はそもそも労働義務を免除されている状態ですので、年休の取得をする余地はありません。

 

 育児休業期間中は、労働者が使用者に年休の時季指定をする余地がないので、使用者としては労働者が年休を取得したいと希望してきても対応は無理だと断れます。

 

しかし、 仮に、育児休業の終了日を繰り上げ変更し復職したとすれば、復職日からは労働義務のある日が復活するわけですので、年休を取得することは通常の労働者と同じ扱いとなります。

つまり、復職した場合には、復職日からさっそく年休を取得できることになります。

4種類の年休制度を比較

 

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育休中に復職後すぐにでも退職する旨申し出ても、その申出時点で育休終了扱いは無理

 

 育児休業の終了事由は、予定されていた終了日で終了となるほかは、法令で規定されており、それ以外の事由で終了とはなりません。

したがって、復職後まもなく退職するということが復職時期が迫ってきた頃に知ったところで、一方的に育児休業の終了とはできないのです。

 

育児休業期間の終了

❶ 終了予定日の前日までに、子の死亡等子を養育しないこととなった事由が生じたとき

❷ 終了予定日の前日までに、子が1歳(1歳6月、2歳)に達したこと

❸ 終了予定日までに、産前産後休暇、介護休業、新たな育児休業が始まったこと

 

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結論

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1⃣ 育児休業中の労働者が年休を取得したいと申し出ても労働義務の免除された状況であるとして、会社は応じる必要はないこと。

 

2⃣ 育児休業の終了日を繰り上げたいと申し出があっても、会社はこれに応じる義務はないこと。

  合意ができる状況にあれば可能となるに過ぎない、繰り上げ終了の制度を定める義務もないこと。

 

3⃣ 復職後まもなくの時期に退職する旨意思が表明されたとしても、それを理由にその時点で育児休業を終了させることはできないこと。

 

最後に、労働者の努力義務も法律にうたわれていることを制度利用の労働者にも周知させることは大切かなと思います。

子の養育又は家族の介護を行うための休業をする労働者は、その休業後における就業を円滑に行うことができるよう必要な努力をするようにしなければならない。
【法3条2項】

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